がんや心臓病より怖い

孤独<11>定年後対策としてのクラウドソーシング

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 サラリーマンにとって定年は大きな節目です。サラリーマンは会社組織に属しているため、社会とのつながりは、会社を介した間接的なものになりがち。仕事仲間とも、会社があればこその付き合いです。退職によって、それらすべてが同時に失われてしまいます。しかも隣近所や町内会など地域とのつながりは、もともと希薄。独身者や、家族との関係が微妙な人には、厳しい現実が待ち構えています。

 そのためもあってか、定年後も仕事を続けたいと思う人が増えてきています。総務省統計局の「統計からみた我が国の高齢者(65歳以上)」(2017年9月)によれば、65歳以上の就業者数は770万人。就業率は22・3%(男性30・9%、女性15・8%)。年々増え続けています。当然ながら正規雇用は少なく、4人に3人が非正規です。

 ただ、電通総研の「シニア×働く」調査(2015年7月)によると、60代の「働きたい」人の3割が、実は働けていないとのこと。とくに60代後半では、求人の多くがパート・アルバイトになるため、「自分の経験や技能を生かしたい」と思っている人には、おもしろくない仕事かもしれません。

 そんな人におすすめなのが「クラウドソーシング」と呼ばれる新しい働き方です。クラウドは「Crowd(群衆・大衆)」です。ソーシングは「外注」とか「外部から調達する」といった意味。つまり企業が「不特定多数の人に仕事を外注する」のがクラウドソーシングです。また企業と受注者の間に立って、仕事の仲介をする業者のことも、クラウドソーシング(業者)と呼んでいます。

 仕組みは単純で、仕事を外注したい企業がインターネットを使って業者のサイトに募集登録(仕事内容・納期・報酬など)をします。数時間から数日で仕上がるような細かい仕事が一般的です。

 一方、クラウドソーシングで仕事をしたい人は、募集中の仕事一覧を眺めて、自分の能力や希望と合った仕事に申し込みます。もちろん、相手の会社に自分のプロフィルや専門スキルなどの情報が提供されるようになっています。

 こうしてお互いに納得できれば、契約成立となります。受注者を評価する仕組みもあるので、仕事をきっちり仕上げて評価が上がれば、より値段の高い、やりがいのある仕事を受けることも可能です。

 クラウドソーシング業者は、全国で数十社に達しており、今後も増えると予想されています。その中の最大手である「クラウドワークス」には、シニア世代(50歳以上)が1万5000人以上も登録しており、1カ月で20万円以上稼ぐシニアもいるといいます。定年後の生き甲斐対策と収入確保の一石二鳥を狙える、うまい仕組みといえるでしょう。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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