O型血液は特別なのか?

<8>B型には及ばないものの…O型は胃がんにもかかりにくい

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 O型の人は胃がんにもかかりにくいことが知られています。

 そのことは、実は1920年代から指摘されており、50年代以降、主にヨーロッパの研究者たちによってたびたび確認されてきたことです。そして20世紀末までには、非O型(A型・B型・AB型の総称)はO型と比べて1.1~1.3倍程度、胃がんのリスクが高いというコンセンサスが形成されつつありました。

 ヨーロッパではA型とO型が圧倒的に多く、B型とAB型が少ないため、非O型といっても実質的にはA型ということになります。

 また20世紀に行われた研究は、胃がん患者を数百人から1000人ほど集めて、その血液型を調べるという小規模なものがほとんどでした。そのため、いまひとつ信頼性が低いという問題もありました。

 転機は2010年に訪れます。スウェーデンとデンマークの研究グループが、両国の献血者100万人以上を対象に、過去35年間に遡って胃がんの発症を調べた研究が発表されたのです。A型がO型よりも1.2倍ほど、胃がんのリスクが高いことが示されました。これは従来の結果と一致します。ところがB型が0.9倍と、O型よりもわずかながらリスクが低いと結果が出たのです。これは思いがけない結果でした。

 しかしその後、中国や台湾で行われた大規模疫学調査でも、B型(とAB型)の胃がんリスクはO型とほとんど同じか、やや低いという結果が出ています。たとえば17年に上海から発表された論文によれば、A型はO型よりも1.2倍ほど胃がんのリスクが高い一方、B型とAB型は0.9倍、1.0倍となっています。また別の研究では、A型はピロリ菌感染が1.4倍も高いことが示されたのです。上海の血液型分布は、A型31%、B型27%、AB型10%、O型32%で、日本人の血液型分布と似ていることから、これらの結果は我々にとって参考になるはずです。

 ちなみに11年に日本で行われた小規模な研究によれば、胃がんにもっともなりにくいのがやはりB型(とりわけBO型)で、AA型がもっともなりやすい(BO型の1.9倍、OO型の1.4倍)という結果になっています。

 どうやら胃がんに関しては、A型が一番かかりやすく、B型がもっともかかりにくい傾向にあるようです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

関連記事