血液型と病気

外傷による死亡リスクが高いO型は、なぜ血が止まりにくい?

血液凝固には血小板とフィブリンが必要(写真はイメージ)/
血液凝固には血小板とフィブリンが必要(写真はイメージ)/(C)PIXTA

 O型は、非O型よりも出血のリスクが大きいのではないか--。過去数十年にわたって、世界中の医師たちがそんな疑問を抱き続け、またそれを確かめるために多くの研究を行ってきました。

 その答えのひとつが、2018年に東京医科歯科大学などの研究グループから発表されました。外傷で救急搬送された901人の患者カルテを調べたところ、O型の死亡率が28%、非O型が11%と、明らかにO型の死亡率が高かったというのです。O型は血が固まりにくいため、失血死する人が多かった可能性が示唆されています。

 また20年には、アメリカの研究グループが、出産時の大出血(1000㏄以上)のリスクを、患者データベースを使って調べました。その結果、通常の分娩では大出血のリスクに差はないものの、帝王切開に限ればO型のリスクが有意に高いことが明らかになりました。O型では帝王切開を受けたうちの5.2%が大出血したのに対し、A型は3.8%、B型4.4%、AB型4.2%にとどまっていたというのです。

 ではなぜ、O型の出血リスクが高いのでしょうか。じつはO型は、血液凝固因子の一部が、非O型と比べて薄いのです。これはかなり以前から知られている事実で、だからこそ、医師たちは長年にわたって血液型と出血リスクの関係を調べ続けてきたのです。

 血液凝固には2系統あります。ひとつは血小板。血管が破れると、駆けつけて積み重なり、穴を塞ごうとします。しかしこれは、川の決壊箇所に石を積むようなものなので、出血を完全に止めることはできません。

 そこで登場するのが、もうひとつの系統であるフィブリンタンパク質です。こちらは通常は血液中に溶けていますが、出血があると、凝固因子と呼ばれる物質の作用によってフィブリン分子が絡まりあって線維状になり、血小板の隙間を埋めてかさぶたをつくります。速乾性のセメントのような働きをするわけです。血小板とフィブリンが連携して初めて、効果的な止血が可能になるのです。フィブリンが固まるためには、凝固因子が欠かせません。これには13種類あります。ところがO型の人は、血小板は正常なのですが、凝固因子に関係する物質が非O型より少ない傾向にあるのです。そのため非O型よりも、血が止まりにくいのではないか、と考えられてきたわけです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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