血液型と病気

血栓には2種類ある O型は足の付け根の静脈に「フィブリン血栓」ができにくい?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 血管内でできる血の塊を「血栓」と呼びます。顕微鏡を使わないと見えない微小なものから、太い血管を塞いでしまうほどのものまで、大きさはさまざまです。

 以前お話ししたように、出血を止める際に、血小板は小石、フィブリン(血液中のタンパク質の一種)は速乾性セメントの働きをします。まず血小板が血管の破れた部分に集まって積み重なり、次にその隙間をフィブリン線維が埋めて固めるわけです。

 ところが血栓のでき方は、もう少し複雑で、その成り立ちから、「血小板血栓」と「フィブリン血栓」の2種類に分かれています。

 まず血小板血栓です。こちらは動脈にできやすい血栓で、とくに動脈硬化が重要なリスク因子です。動脈硬化が進むと、動脈の内壁に、アテローム性プラークと呼ばれる塊ができます。これは、脂質や炎症細胞が混ざり合ってできた、カサブタのようなものです。それが血流によって剥がれると、血管内壁のキズがむき出しになるため血小板が集まってきて、血栓を作るのです。血栓吸引カテーテルという装置で吸い出してみると、白っぽい色をしているので、「白色血栓」と呼ばれることもあります。

 一方、フィブリンタンパク質は、血液中で常に離合集散していながら、バランスを保っています。それが何らかの原因で繊維状(網状)に結合すると、周りの赤血球を絡めとって、血栓を作り出してしまうのです。それがフィブリン血栓です。赤血球が多く含まれているので、「赤色血栓」とも言います。

 フィブリン血栓は、主に静脈にできます。血流が滞りがちのところにできやすく、とくに足の付け根の静脈は、太くて血流が遅くなりがちなので、フィブリン血栓が最もできやすい場所になっています。

 血栓が血管を詰まらせると、さまざまな病気が発症しますが、原因がどちらの血栓かで、治療法やその後の予防法が違ってきます。血小板血栓ができた人には抗血小板薬(血小板の働きを抑える薬:バイアスピリンなど)が使われ、フィブリン血栓ができた人には、抗凝固薬(フィブリンの働きを抑える薬:ワーファリンなど)が処方されます。

 血液型との関係でいえば、フィブリン血栓のほうに違いが出やすいことが予想されます。O型はフォン・ヴィレブランド因子が少なく、そのため第Ⅷ凝固因子が薄めで、フィブリン分子が他の血液型よりも固まりにくいことが特徴だからです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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