データが語る 令和高齢者の実像

遠のくシルバーシート…将来的に高齢者は「75歳」からになる

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 多くの問題は、高齢者が増えすぎたことに起因します。だから高齢者を減らせば、ほぼ自動的に問題が解決するはずです。しかし、そんなことが可能なのでしょうか。

 実は意外と簡単で、「高齢者」の年齢を引き上げさえすれば、うまくいきそうです。世界保健機関(WHO)は、65歳以上を高齢者と定義しており、日本もいままでこの定義に従ってやってきました。しかし、平均寿命は伸び続けていますから、すでに20年も前から「高齢者の定義を変えるべき」という議論が、専門家の間で交わされてきたのです。

 そうすることによって、財政的な負担を減らすことができるでしょう。高齢者を65歳以上とすると、現在の高齢化率(総人口に対する高齢者の割合)は28.9%です。しかし、たとえば75歳以上にすれば、高齢化率は一気に14.9%に下がります。

 政府の高齢者対策を追っていくと、当面は高齢者を70歳以上とし、将来的には75歳以上にすることを、強く意識しているようにも見えます。

 民間企業の定年(再雇用を含む)は65歳まで延長されていますが、さらに70歳を努力目標とすることが、昨年決まりました。

 そんな政府の動きと前後して、日本老年学会と日本老年医学会が共同で、次のような新区分を提案しています(2017年)。

■65~74歳 准高齢者
■75~89歳 高齢者
■90歳~  超高齢者

 高齢者の健康や医療の専門家集団が、公式に「高齢者は75歳以上」と言い出したのですから、外堀は着実に埋まりつつあると思ったほうがいいでしょう。いま50代の人は70歳まで、40代の人は75歳まで働き続けるのが当たり前になってくるはずです。

 いや、すでにそうなりつつあるのです。総務省の統計によれば、2017年における高齢者(65歳以上)の就業率は、日本が主要国の断然トップで23.0%でした。いまや高齢者の4人に1人が仕事をしているわけです。70歳定年は、すぐそこまで迫っています。

 もちろん、できるだけ長く仕事を続けたいという人も大勢いますから、定年延長自体が悪いわけではありません。しかし働き続けるためには、健康を維持する必要があります。また仮に「高齢者は75歳から」と決めたとしても、それ以前に体力や気力がなくなってしまっては、あまり意味がありません。その点はどうなっているのでしょうか。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

関連記事