健康指標の意味を知る

【血圧】「心拍出量」と「血管抵抗性」で決まる 上が140以上で高血圧

上が140以上で「高血圧」
上が140以上で「高血圧」

 コロナ禍が収束し、新年度を迎えようとしています。春は健康診断の季節、いまから心がざわついている人もいると思います。今回は健診項目について、簡単に解説していきます。

 最初は「血圧」です。いまさらと思うかもしれませんが、どんな数値か問われると、答えるのが難しいはずです。医学的には「血液(血流)が動脈の内壁に与える圧力」となっています。単位は「㎜Hg」、水銀柱を何ミリ押し上げる圧力かを表しています。

 血圧を左右する要素はいくつかありますが、主に「心拍出量」と「血管抵抗性」の2つで決まるといわれています。前者は、心臓が押し出す血液量、後者は血管における血液の流れにくさです。

 ポンプとホースの関係と同じで、血液量が増え、血管の抵抗が上がれば、血圧は上昇します。ですから血圧が高いと言われても、それだけではどちらが問題なのか分かりません。しかしどちらにしても、心臓の負担が増えたり、血管の内壁が高圧にさらされて弾力性が失われたりしますから、大病のリスクが上がります。

 基準はどうなっているのでしょうか。テレビCMなどでは、上が130を超えると大問題であるかのようにあおっていますが、そんなことはありません。日本高血圧学会の治療ガイドラインでは、上が140以上になると、高血圧と診断されます。ただし159までは軽度(Ⅰ度)とされ、食事や生活習慣の見直しが中心となります。ちなみに上が130~139は「高値血圧」といって、まだ様子見(経過観察)の段階です。

 昔はもっと基準が甘く、1987年以前は上が180以上になって、ようやく高血圧と診断されていました。それがどんどん下げられて、2008年に130となったのです。しかしさすがに行き過ぎの声が大きく、現在は上述のように緩和されています。

 このように基準自体が上下しているわけですから、健診で血圧が多少高めだったとしても、あまり深刻になる必要はなさそうです。(永田宏・長浜バイオ大学メディカルバイオサイエンス学科教授)

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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