医者も知らない医学の新常識

「マスクストレス」の健康に対する影響は? 米医学誌で報告

医療用の高性能マスク「N95」

 新型コロナの流行以来、「外出にはマスク」というのが、感染予防のための習慣となりました。今ではマスクの使用は個人の判断という方針になりましたが、それでも人混みなどでは、屋外でもマスクをしている人が多いのが現状です。有効性が確認されているマスクを適切に使用することは、特に感染拡大を防ぐという意味では有効な方法です。しかし、マスクをしていると息苦しさを感じ、十分に息が出来ないように感じる人がいることもまた確かなことです。特にN95マスクと呼ばれる医療用の高性能のマスクは、皮膚への密着性が高く、そうした息苦しさをより感じやすいと考えられます。

 それでは、実際に長時間、高性能のマスクを装着していると、どのような健康影響があるのでしょうか? 今年の米国医師会関連の医学誌に、中国で行われた臨床研究の結果が報告されています。30人のボランティアが高性能のN95マスクを14時間連続して装着したところ、1時間以内に血液の酸素濃度は低下し、その後、交感神経は緊張して心拍数や血圧が上昇しました。血液のストレスホルモンの数値も増加していました。

 健康な人ではこうした影響は問題になるほどではありませんが、心臓や肺に病気を持つ人では、無視出来ない健康影響につながる可能性があります。マスクの装着についてはこうした点にも配慮して、その対象を決める必要がありそうです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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