医者も知らない医学の新常識

高齢者の「息」は若者より感染リスクが高い 米科学アカデミー機関誌で報告

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナの流行以降、「エアロゾル感染」という言葉を耳にする機会が多くなったと思います。これはウイルスを含む小さな飛沫(ひまつ)による感染のことで、こうした飛沫は目には見えないのですが、吐く息とともに空気中に排出され、長くそこにとどまるという性質があります。新型コロナが屋内で感染しやすいのは、このエアロゾル感染が大きな原因であると考えられているのです。

 では、こうしたエアロゾルは、どのような時に多く排出されるのでしょうか? エアロゾルの排出量は、運動により増加することが知られています。屋内のスポーツジムなどで集団感染が起こったのはそのためです。激しい運動により、エアロゾルの排出量は安静時の100倍を超えると試算されています。

 年齢も、エアロゾルの量に影響を与えることが最近注目されています。今年の米国科学アカデミーの機関誌に発表された論文に、20~30代の若者と、60歳以上の高齢者の「息」のエアロゾル排出量を比較した研究結果が発表されています。それによると、高齢者の安静時のエアロゾル粒子の排出量は若者の2.7倍多く、運動中でも2.1倍多くなっていました。

 感染している高齢者の息からは、より多くのエアロゾルが排出され、より感染の危険が大きいのです。これが高齢者の差別につながってはいけませんが、エアロゾルの量を考慮した感染対策が今後は重要になりそうです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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