高齢者の正しいクスリとの付き合い方

抗菌薬と一緒に「整腸剤」が処方されるのはどうしてなのか

抗菌薬が処方される際、多くの場合で整腸剤も一緒に処方される

 整腸剤の成分は、ビフィズス菌や乳酸菌といった“体に良い菌”として知られる「善玉菌」という菌になります。「それならば、整腸剤の菌も抗菌薬の作用でやられてしまうのではないか?」と疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。まさにその通りで、普通の整腸剤に含まれる菌は抗菌薬の効果によって他の細菌と同様にやられてしまいます。

 それでも、整腸剤を処方するのはなぜでしょうか。抗菌薬と一緒に処方される整腸剤の中には、名前の最後にアルファベットの「R」が付けられているものがあります。じつは、この「R」に秘密があるのです。「R」は「resistance」、つまり「耐性を持った」という意味があります。名前に「R」が付けられた整腸剤に含まれている菌は人為的に強化され、抗菌薬に対して耐性を持っているため、抗菌薬と一緒に使用してもやられません。ですので、抗菌薬によって腸内細菌がやられて起こる下痢に対しても予防的な効果を発揮するのです。

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東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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