高齢者の正しいクスリとの付き合い方

クスリを使っている人はお酒を飲んでも問題はないのか?

ビール500ミリリットルで肝臓のアルコール代謝は飽和するといわれている

 高齢者の方の中には、お酒を飲むことが好きな方もいらっしゃるでしょう。私は病棟での業務に携わっていますが、退院のときに「お酒はどのくらい飲んでもいいの?」と質問されることが時々あります。今回はクスリとお酒の関係性についてお話しします。

 結論から言ってしまうと、「クスリを使っている以上は、お酒は飲まないでください」となります。薬剤師という職業上、そうとしか言えません。つまり、「お酒とクスリの相性は良くない」ということなのです。

 クスリの中には肝臓で代謝を受けて(解毒されて)体外に排出されるものがたくさんあります。そして、お酒に含まれるアルコールも肝臓で代謝を受けます。お酒を飲むと肝臓の代謝機能がアルコールの代謝に集中してしまうため、クスリの代謝がうまくされなくなってしまうのです。

 これが何を意味しているかというと、本来なら肝臓で代謝を受けるはずのクスリの作用が強くなったり、場合によっては副作用のリスクが高くなってしまうということになります。肝臓で代謝を受けないクスリしか使っていない、という場合はこの限りではありませんが、先ほどお話しした通り、多くのクスリが肝臓で代謝を受けます。こういった理由から、「お酒は飲まないでください」という話になるのです。

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東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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