役に立つオモシロ医学論文

寒い時季は高血圧や心臓病に注意するべし

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 春が近づいていますが、まだまだ寒い日が続きます。「外の気温が低いと血圧は高くなる」ということをご存じの方も多いでしょう。これは体内の熱を逃がさないように血管が収縮するためです。ホースの口を狭くすると水圧が上昇するのと同じように、血管が収縮すると血圧は高くなります。

 この理屈は理解しやすいですが、それによって、高血圧の合併症である心臓病は増えるのでしょうか。中国で行われた観察研究が、「欧州心臓病学会誌」(2015年5月号)に掲載されました。

 この研究は中国10地域において、過去に心臓病を経験した2万3040人(平均61歳)を解析したものです。外気温と血圧、心臓病発症の関連を7年間にわたり追跡調査しました。なお、年齢、性別、高血圧治療、喫煙、飲酒など、結果に影響を与え得る因子で統計的に補正して解析しています。

 その結果、収縮期血圧(上の血圧)は夏季(平均25.5度)で平均136mmHg、冬季(平均3.8度)で平均145mmHgと、統計的にも有意に冬季で高くなりました。外気温が5度以上という条件の下で、気温が10度下がると収縮期血圧が6.2mmHg上昇することが示されています。さらに、収縮期血圧が10mmHg上昇するごとに、心臓病による死亡は21%増加しました。心臓病による死亡は、夏季に比べて冬季で41%も多かったと報告しています。

 厚労省の統計でも、心臓病や脳卒中による死亡は秋から冬にかけて増加するようです。季節との関連性は、例えば感染症などの影響もあるかもしれませんが、冬場の寒さは血圧の上昇、そして心臓病にも注意が必要かもしれません。

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。