病院は本日も大騒ぎ

全身血まみれの患者に携帯電話を許したベテラン救急科医師

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 応急手当ては一刻を争います。そのベテラン救急科専門医と3人ほどの看護師がつき、患者さんをすぐにストレッチャーに乗せました。すると、大ケガを負っている患者さんが、ポケットに手を入れてモゾモゾと体を動かしているのです。

「何をしているのだろう」と思い見ていると、患者さんが弱々しい声で、「先生、自宅に携帯電話で知らせたいのですがいいですか?」と、聞いていたのです。

 私は「今の状況を考えろ!」と、救急科医が患者さんを怒鳴りつけるのだろうと思いました。ところがその医師は、「ああ、いいよ。電話しなさい」と言いながら、平然とストレッチャーを押しているのです。

 全身血まみれの患者さんは、電話に出た奥さまに「ごめん、お酒飲んだ後に事故に遭っちゃって。ホントごめん、あの時君に言われた通り、帰ればよかったんだけど……。悪いけどいま病院なんだ。あとで来てくれる?」と話をしていました。その横で救急科医はテキパキと指示を出し、はさみで患者さんの衣服を切るなどして、治療を始めていました。

 普段は「奥さまと子供に虐げられてツライ」とこぼす頼りなさげなこの医師を少し小バカにしていましたが、「ああ、これがベテランというのだな」と感心しました。

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