こう回想する越川さんは、うつ病から抜け出すまで数年どころか、今年の春先まで10余年の歳月を費やした。
脳のシステムが侵されるといわれるうつ病だが、実のところ原因はまだ鮮明になっていない。そのため、特効薬もないのが現状だ。
3年ごとに実施されている厚労省の「平成26年患者調査」によると、「うつ病など気分障害受診者」は、111万6000人。およそ20年前の平成8年(43万4000人)に比べ、約2・6倍も増えている。
同患者層のトップは40代の19・6%だが、これは受診者数で、潜在的なうつ病患者数はその数倍にも及ぶだろうと推測されている。
「私がうつ病の苦しみをいくら口で説明しても、理解してもらえないかもしれません」
越川さんの10余年に及ぶ「うつ病生活」は、どれほどの苦渋だったのか。
ドキュメント「国民病」