Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

検査編<2>性別で違うHPV治療 女性は婦人科も男性は耳鼻科

 咽頭がんは、一般に過度の喫煙や飲酒の影響が強いといわれます。しかし、こと中咽頭がんに関しては、HPVの影響が無視できません。米国では6割がHPVの感染が原因で、日本は5割。スウェーデンでは9割に上るという報告もあるほどです。

 米俳優マイケル・ダグラスさん(72)は自らのがんを公表し、「咽頭がんの主な原因はHPV感染だからね」と語っています。まさにその通りなのです。

 この事実が意味していることは何か。HPVワクチンの可能性です。日本では、子宮頚がんワクチンとして認可されたものの、副反応問題で揺れていますが、女性に限らず男性もHPVワクチンとして接種すれば、子宮頚がんも中咽頭がんも多くが予防できるということです。

 HPV感染による中咽頭がんは、比較的治りやすいことも分かってきました。HPVの有無で、治療法が変わるようになっています。男性も、HPVと無縁ではないことがお分かりいただけたでしょう。

 咽頭がんは比較的治りやすいものの、治療が遅れると声を失うリスクもあります。声がかすれる、喉が痛む、のみ込みにくいという症状がある場合は、放置せず、すぐに耳鼻科でファイバースコープ検査を受けるとよいでしょう。咽頭がんの患者数は男性が女性の2倍ですから、男性は要注意です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。