動脈硬化に勝つ

世界の主要死亡原因ではトップだが今からでも予防は可能

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 一般的に動脈硬化は、「老化で動脈の血管壁が硬くなる」と思われている。しかし、透析患者ら特殊な例を除き、血管壁の内側の「血管内皮」の異常で血管壁の内側に酸化LDLコレステロールなどが蓄積し、血管壁が内腔へ盛り上がり、狭くなって血流が悪化。それによって、血液が詰まりやすくなる状態が動脈硬化なのだ。

 さらに、動脈硬化が引き起こす疾患は一つではない。心臓の血管(冠動脈)に動脈硬化が起これば心筋梗塞や狭心症、脳血管なら脳卒中(脳梗塞、脳血栓など)、足の血管なら末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)、大動脈なら大動脈解離を引き起こす。

「つまり、世界の主要死亡原因は動脈硬化症とも言えるのです」

 日本人では死因トップは悪性新生物(がん)だが、がんは部位ごとに原因が異なったり、治療薬も違う。がんには原因が不明なものも多いため予防が難しい。早期発見早期治療が肝心とはいえ、自覚症状に乏しく、検査を毎年受けていても見つかりづらいがんもある。分かった時には手術の選択肢はなく、抗がん剤や放射線といった延命治療のみ、というケースは珍しくない。

「一方、動脈硬化は適切な情報を得られれば、対策を講じることにより、予防や進行阻止が可能です。結果的に、虚血性心疾患や脳卒中の予防になる」

 そのために、私たちが押さえておかなければならないことを次回から紹介する。

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伊東春樹

伊東春樹

日本循環器学会専門医、日本心臓病学会(上級臨床医、FJCC)。「けやき坂医科歯科クリニック」非常勤。