役に立つオモシロ医学論文

妊娠中に携帯電話を頻繁に使うと子供の言語能力が高く?

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 妊娠中の携帯電話やスマートフォンの使用が胎児にどのような影響を与えるのかに関して、一定の見解は得られていないようです。過去には妊娠中の携帯電話使用が、出生した子供の問題行動に関連するという研究も報告されているようですが、一方で関連性はないとする研究もあります。

 そんな中、妊娠中の携帯電話の使用と、出生した子供の言語発達遅延リスク、運動能力低下リスクの関連を検討した論文が、生物医学誌で有名な「バイオメド・セントラル」の公衆衛生専門誌に2017年9月5日付で掲載されました。

 この研究は4万5389例の母子ペアを対象に、母親には妊娠初期における携帯電話の使用頻度をアンケート調査し、出生した子供には3歳時点の言語能力、運動能力が調査されています。

 その結果、母親が携帯電話を使用しなかった子供に比べて、携帯電話の使用があった子供では、言語能力の発達遅延リスクが17%低いという結果でした。このリスクは携帯電話の使用頻度により異なり、低頻度では13%、中等度の頻度では22%、高頻度では29%低下しました。つまり妊娠中の携帯電話使用が言語能力発達の低下リスクを抑制するという結果になっています。さらに運動能力低下リスクも18%低下するという結果が示されました。

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青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。