実録 父親がボケた

<7>出かけたまま帰り道が分からなくなり工場に“不法侵入”

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 母の携帯にかけても留守電で通じない。私が迎えに行くしかないのかと準備し始めたところで、母から電話が。「お父さんが同期の人と会うって言うから私は買い物に行ってたの。でも家の前のバス停で降りられずに終点まで行っちゃって。帰り道で疲れて工場の前で動けなくなったの」と言う。 その後、母は工場に菓子折りを持って謝りに行った。父の携帯には、母と家の番号を紙に書いて張った。というのも、Sさんは私にかける前に、父の携帯の中から親族っぽい名の人にかけたらしい。遠方に住む親戚や姉にも電話があったという。

 それ以降、父の数少ない外出を制限するしかなかった。父の同期にも母が状況を伝えた。「夫は認知症で、ひとりで帰宅できません。今後は伺えないと思います」と。相手もすんなり納得。父の異変に気づいていたのだろう。

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吉田潮

吉田潮

1972年生まれ、千葉県出身。ライター、イラストレーター、テレビ評論家。「産まないことは『逃げ』ですか?」など著書多数

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