気鋭の医師 注目の医療

骨格筋の新医学を切り開く 世界で初めて検出法を確立

藤井宣晴教授(C)日刊ゲンダイ

 マイオカインの分泌は筋肉の収縮(運動)によって高まる。この仮説は1960年代に報告されていたが、一気に注目されるようになったのは1990年代に人の筋肉を使った研究報告がされたからだ。ただし、そのときの研究は血液中のマイオカインを調べたもので、他の臓器からも流入している可能性があり、信頼性に乏しかったという。

 そして、藤井教授らがマイオカインの研究を始めたのが2008年。4年後には世界で初めて、筋肉のみから分泌される純粋なマイオカインの検出法を確立した。

「これまで約30種ものマイオカインが報告されていますが、中には検出法が曖昧で議論の余地のあるものも含まれます。私たちは間違いなくマイオカインに運動の健康効果があると考えていて、いいかげんな科学分野にしたくないので、慎重に研究を進めています」

 確立した検出法とは、筋肉細胞を培養して再合成した「培養細胞」を使った筋収縮モデル。これに電気刺激を与え収縮させることでマイオカインを分泌させ、その物資が何かを、ごく微量の物質でも同定できる質量分析法で検出する。この検出法を用いて、藤井教授らがこれまで特定したマイオカインは10種類以上になるという。

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