医者も知らない医学の新常識

専門誌に論文 認知症が「ステロイド」で予防できる可能性も

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 認知症はいったん症状が進んでしまえば、その進行を遅らせるような治療しかありません。もちろん予防できればそれに越したことはないのですが、決め手となるような予防法や予防薬もないのが現実です。何か有望な方法はないのでしょうか? 

 認知症は脳の神経細胞の炎症が原因のひとつである、という仮説があり、それが本当であるとすると、炎症を抑えるような治療で認知症が予防できるかも知れません。

 今年の認知症の専門誌に、「治療薬のステロイドと認知症」との関係を調べた、興味深い論文が掲載されました。ステロイドは炎症を抑える作用を持つ薬で、飲み薬や注射以外に吸入薬や点鼻などでも使用されています。

 ドイツにおいて大規模な医療保険のデータを解析したところ、ステロイドを継続的に使用している人は、そうでない人より、20%近く認知症が少なくなっていました。ステロイドの種類では、もっとも予防効果があったのはぜんそくなどの「吸入ステロイド」で、35%も認知症になる人が少なく、続いて「点鼻のステロイド」も高い予防効果が認められました。これはぜんそくなど他の病気の治療のために使われていたので、その効果はまだ確実とは言えませんが、吸入や点鼻のステロイドは副作用も少なく、画期的な予防法となる可能性があります。

 近い将来、ステロイドが認知症の予防に使われるようになるかも知れません。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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