医者も知らない医学の新常識

体の免疫を調整 BCGワクチンを打つと肺がんが6割減る?

写真はイメージ(C)PIXTA

「BCG」というワクチンがあります。剣山のようなたくさんの針を、皮膚に同時に刺して行うやり方で、「はんこ注射」といわれることもあります。

 これは牛の結核菌からつくられた生ワクチンで、主に小児期の結核予防のために行われています。今では1歳前のお子さんに対して、定期接種となっていますが、以前はツベルクリン反応という結核の検査をして、免疫がないお子さんに限って使用されていました。

 さて、この結核ワクチンであるBCGには、もうひとつ「体の免疫を調整してがんを予防する」ような働きがあることが知られています。実際に膀胱がんの治療には、このBCGワクチンが使用されているのです。

 それでは、BCGワクチンを打つことで、どのくらいがん予防に効果があるのでしょうか? 今年の米国医師会雑誌の姉妹誌に、興味深い結果が報告されています。小児期にBCGワクチンを接種したアメリカの先住民などを、その後60年にわたり調査したところ、大人になってからのがんの発症は、BCGワクチンを打った人で少ない傾向があり、特に肺がんについては、その発症が6割も低下していました。以前の調査では、悪性リンパ腫という血液のがんが、BCG接種者で増えるという、気になる報告もあったのですが、今回の調査では否定されています。

 皮膚に痕がつくことから、あまり評判の良くないBCGワクチンですが、実はがん予防の効果があるかも知れないのです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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