独白 愉快な“病人”たち

紺野ぶるまさん 便秘がきっかけで卵巣と心臓に病気が見つかった

紺野ぶるまさん(C)日刊ゲンダイ
紺野ぶるまさん(芸人・33歳)=心房中隔欠損症・卵巣嚢腫・突発性難聴

 先天性の心疾患「心房中隔欠損症」だとわかったのは5歳のときでした。きっかけは便秘です。ある日、「ウォー」って叫ぶくらいめちゃくちゃお腹が痛くなって、幼稚園に行けなかったことをはっきり覚えています。

 自宅近くの病院でレントゲンを撮ったら、便が胸の辺りまで到達していてお医者さんも家族も驚いていました。そのときは浣腸をして終わりましたが、わりとすぐに2回目の腹痛に襲われ、親もおかしいと考えて向かったのが大学病院でした。検査をすると、なんと右の卵巣が腫れあがっている上に捻転を起こしていました。たった5歳で「卵巣嚢腫」でした。

 それで「手術しなければ」ということになり、全身を調べていたら「心房中隔欠損症」も発見されたというわけです。

 心房中隔欠損症は、右心房と左心房の間の壁に穴が開く病気で、私の場合は穴が8個も発見されました。なので、卵巣嚢腫とほぼ同時期に心臓の手術をしたというのが幼少期の病歴です。

 その頃は、心臓に穴がたくさん開いていることから「自分の胸にはオカリナがある」と自慢していました。誰も笑ってなかったですけど(笑い)。こんなふうに決して病弱だったわけではなく、退院後は元気で、小学校では一番背が高く、足も速くて、中学のバドミントン部では都大会に出場したくらいスポーツに取り組んでいました。

 病院から「もう検診に来なくていいです」と言われたのは中学2年生ぐらいでしたね。

 その後、普通に学生生活を送り、芸人になったわけですが、当時は胸元がザックリ開いた服が好きで、胸の真ん中にある大きな手術の傷も結構見えていたんです。芸人になるまでは、周りから「それ、何?」と聞かれたこともなかったんですけど、芸人になったらバンバン聞かれて、「そんなに気になります?」と返すと、「これに気づかないヤツはいないよ。あんまりそんな服着ない方がいい」と教えてくれて、初めて「ああ、みんな気を使ってくれてたんだ」と気付きました。

■再び卵巣が腫れあがって即手術に

 芸人になる前の21歳のときはいろいろありました。気付くとお腹が大きくなってきたんです。友人には「妊娠じゃないの?」と言われましたが、生理はちゃんと来ていましたし、心当たりもありません。小さい頃の経験があるので婦人科に行って調べてもらうと、また卵巣が腫れあがっていたんです。左右のどちらが腫れているかもわからないくらいの大きさになっていて、即手術になりました。婦人科系の病気は症状が出にくいので、定期健診の大事さを学びました。私もあと少しで破裂していてもおかしくなかったと医者から叱られましたから。

 そんなこんなのストレスで、退院後には「突発性難聴」にもなりました。復帰したバイト先で突然、平衡感覚を失って、左耳が聞こえなくなって歩くこともできず、吐き気にも襲われて「終わった」と思いました。

 病院へ行くと「突発性難聴だね」と言われてステロイド系や漢方系などいろいろな薬が処方されました。中でもまずかったのが「イソバイド」(一般名はイソソルビド)という液体の薬でした。即効性があるのですが、もう飲むのが苦痛なくらいまずかったです。

 その頃は、「浜崎あゆみさん(難聴)や宇多田ヒカルさん(卵巣嚢腫)と同じだ」と大好きな歌姫たちも同じ苦しみをしているということが大きな支えでした。

■自分が経験を話すことで誰かひとりでも楽になってもらいたい

 病気もそうですけど、私、不運が多いんですよ。ちょいちょいコケて骨折するとか、ウンコ踏んじゃうとか、露出狂に遭遇するとか……。「あなたと一緒にいるとよく見る」と言われるくらい本当に多いんです。普通のOLだったら、たぶん「なんで私ばっかり……」と落ち込んでいたと思うんですけど、芸人は全部ネタになるので芸人でよかったなと思ってます。

 とはいえ病気については、特に婦人科系のことはいろいろセンシティブな問題をはらんでいるので、これまではあまり話してきませんでした。話したら、私のネタで笑いづらくなるかな、というところも懸念していました。しかし昔から、自分の経験を話して誰かひとりでも楽になってもらいたいという思いがありました。

 病気自慢をしたいわけではもちろんありません(笑い)。入院当時の自分は、同じ病気をしている方の赤裸々なブログや著書にさんざん救われてきました。いまその人が健康だという事実だけでものすごくモチベーションが上がるんです。せめて誰かの役に立ちたいという思いは、きれい事ではなく自分のためでもあるんです。

 病気から学んだことといえば、21歳の卵巣の手術で麻酔注射が尋常じゃなく痛くて大騒ぎしていたら、「次は脊髄に打ちますから1ミリでも動いたら危ないので動かないで」と言われたときのことです。看護師さんの手を握り、その2年前に味わったものすごくつらい失恋の痛みを思い出していたら、注射をされている数秒は頑張れたのです。要は「身体的な痛みより、精神的な痛みの方がつらいんだ(数秒間なら)」ということを学びました(笑い)。

(聞き手=松永詠美子)

▽こんの・ぶるま 1986年、静岡県生まれ。21歳で松竹芸能東京養成所に入所し、2009年に松竹芸能所属芸人になる。15年に、すべてのお題を「ちんこ」で解く、「ちんこ謎かけ」が話題になり、「R―1ぐらんぷり」の17、18年で決勝進出。「女芸人№1決定戦THE W」でも17年から3年連続で決勝進出を果たす。19年に結婚。現在、下ネタへの熱い思いをつづった初の著書「下ネタ論」(竹書房)が発売中。

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