岸田政権が推し進める「国民皆歯科健診」にはこれだけの課題が

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「国民皆歯科健診」という言葉をご存じだろうか。すべての国民が生涯を通じて歯科健診を受ける仕組みのことで、今月初めに政府が閣議決定した経済財政運営の指針となる「骨太の方針」に盛り込まれ、注目されている。現時点では、実現に向けて具体的な検討を始めるという段階で詳細については決まっていないが、歯科治療の現場ではどう受け止められているのか。

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 かねて、厚労省は「8020運動」(80歳の時点で自分の歯を20本残す)を進めていて、これまでの「骨太の方針」にも、「生涯にわたって歯科健診を強化すべき」と書かれていた。今回の記載はその方針をより強化しようという印象を受ける。歯周病や虫歯を予防するための口腔ケアは、全身の健康にとって重要であることが明らかになっているからだ。都内にある歯科医院の院長が言う。

「近年、歯周病が悪化すると、糖尿病、高血圧、脳血管疾患、心臓血管疾患、がん、認知症をはじめ、全身の病気の発症リスクが高くなることが複数の研究で報告されています。口腔内の歯周病菌が血液に入り込んで全身に行き渡ったり、歯周病菌が放出する毒素によって引き起こされる歯肉や粘膜の慢性的な炎症が、さまざまな病気のリスクを高めるのです」

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