働き盛りのオトナ世代は要注意。歯の健康を意識してますか? 実は重要!歯髄を残す歯髄温存療法とは。

「歯内療法」で健康維持を!

 人生100年時代となり誰もが長生きできる今、何歳になっても食事をおいしく取り、健康で生き生きと暮らしていくためには丈夫ないい歯を保つこと、それが大事なのはいうまでもないだろう。

 先日、日本歯内療法学会が20代~60代の勤労中心世代800名を対象に「歯の再治療に関するアンケート調査」を実施したところ、いくつもの興味深い結果が得られたという。

以前神経(歯髄)を抜いた歯を再治療(もう一度歯の根の治療)した(している)経験はありますか?
何よりも大事な歯髄(神経)を抜いた歯の定期検診

 調査結果を見ると、これまでに、むし歯の治療をしたことがある人は20代で65.6%、さらに歯髄(神経)を抜いた経験のある人が28.1%おり、特に歯髄を抜いた経験は30代(40.0%)、40代(60.0%)と年を重ねるごとにその割合が大きく上がっていることが分かった。

 しかも、ここで問題になるのは歯髄を抜いた箇所をはっきりと記憶していない人が全体の63.3%(どの歯を治療したか曖昧39.4%+全く覚えていない23.8%)もいたということだ。全く覚えていない割合は年代が高くなるとともに増加する傾向にあり、加えて60代以降になると3人に1人(33.1%)が歯髄を抜いた歯の再治療を行った経験を持っている。

 これらの結果から、治療した歯が多くなるにつれてどの歯を治療したのかが把握できなくなり、そのため歯髄を抜いた歯を意識した適切な口腔ケアができていないことがうかがえ、それを裏付けるように現在むし歯の治療以外で半年に1回以上歯科医院に通っている人は全年代で42.3%と半数以下にとどまっているという結果も示された。政府が国民皆歯科検診の方針を打ち出している中、どうやら日本の歯科検診頻度は低いというのが残念ながら現状のようだ。

 いずれにしても、働き盛りのうちに歯髄を抜いてしまった歯はその後痛みを感じにくくなり、むし歯を悪化させてしまうリスクが少なくないばかりか、同じ箇所を繰り返して治療すると治療難度が上がってしまうことになる。それだけに定期的な検診が何よりも重要といえるだろう。

歯の断面図と歯髄
「歯内療法」は経験と技術に優れた専門医に委ねる

 歯は人体で最も硬い組織であり、その中には一般的に神経と呼ばれる歯髄という柔らかい組織が、根の先のほうの小さな孔で、あごの中の神経や血管とつながっている。つまり、歯の痛みを感じたり、その異変を察知して、むし歯などの症状を知らせる大切な役目を担っているのが歯髄というわけだ。

 ところが、歯髄が、むし歯や外傷で細菌の感染を受けると強い痛みや歯肉の腫れを生じるようになり、そうした場合にはその歯を救い、さらに長い間機能させるために歯髄の一部や全部を除去して歯を残す治療、いわゆる「歯内療法(根管治療)」が求められることになる。

 歯内療法は一般的に歯の神経の治療といわれ、根管(歯を支える土台としての根)の処置をしなければならない治療だ。それはもちろん通常の歯科医院でも受けることができるが、根管の先端は見た目の歯の根の先端から1㎜内側にあるため、そこを治療するには、より繊細で高度な技術が必要となってくる。

 そこで、日本歯内療法学会の会員で、症例審査、筆記試験、さらには口頭試問を通過した会員にだけ与えられる「専門医」の資格を持つ歯科医の治療を受けることがおススメだ。専門医の資格を持っている歯科医は同学会のホームページで確認できるので、参考にするといい。

>>>一般社団法人 日本歯内療法学会

金丸順策 日本歯内療法学会 理事 国内渉外委員会委員長

 長い人生で歯の本数を保持することは健康維持においてとても重要といわれるが、それはとりもなおさず、歯髄を守ることが大事なのだ。

「年齢を重ねるにつれ、むし歯が深く進行し、歯の神経(歯髄)を抜いた経験のある方も増加していく傾向にあることがわかりました。神経のない歯は、神経のある歯に比べてむし歯などによる異変を察知し、その症状の変化を知ることができなくなります。むし歯にならないような早期のケアが重要であるとともに、神経を取った歯では再治療を繰り返さないようにしっかりとした治療を受けることが必要です」と専門医の金丸順策 日本歯内療法学会 理事 国内渉外委員会委員長は語る。

 そのためには「日々の歯のケアを怠らないこと」、「定期的に歯科検診を受け歯の状態をチェックしておくこと」、「普段の生活で歯の痛みを感じたら放置せず早期に歯科医師に相談し、必要に応じた治療を行うこと」、それらをしっかりと肝に銘じておくべきだろう。

【提供】一般社団法人 日本歯内療法学会