高齢者の正しいクスリとの付き合い方

クスリの包装シートが手で簡単に1錠ずつ切り離せない理由

1錠ずつ切り離すのは危険

 じつは、以前は手だけで1錠(カプセル)ごとに切り離せるようなPTPシートがたくさんありました。でも、今はそれができなくなっているのです。クスリをあらかじめ1錠(カプセル)ごとに切っておいて飲みやすくしておきたい方にとっては、なんとも面倒くさいことになっているといえます。しかし、これには重要な理由があるのです。

 1錠ずつに切り離せるPTPシートが使われていた頃、まれにではありますが、高齢者、特に超高齢者がPTPシートのままクスリを服用してしまう事例があったのです。「クスリをシートから出さずに服用するなんてことある?」と思われるかもしれませんが、私自身これまでに2例ほど経験しています。PTPシートは切り離すと角が鋭利になるため、それが食道や胃を傷つけてしまう危険があります。

 また、それを取り出すためには胃カメラを使わなければいけません。つまり、とても悲惨な結果になってしまうのです。そういったPTPシートの誤飲を防ぐために、今のPTPシートは簡単には1錠ずつに切り離せないようになっているのです。

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東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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