独白 愉快な“病人”たち

鈴木砂羽さんは子宮筋腫で上部切除を選択 「すごい決断」と言われたが、何が?という感じ

女優の鈴木砂羽さん(写真)Naoko Kumagai、(スタイリスト)Rieko Sugimura
鈴木砂羽さん(女優/50歳)=子宮筋腫

 貧血で顔が真っ白な紙のようになるくらい生理が重かったので、昨年6月に子宮筋腫と子宮上部を開腹手術で切除しました。おかげさまですこぶる快適。改めて「煩わしかったんだな」と思いました。

 40代前半から筋腫があるのは知っていました。こう見えて、割と定期的に健診に行くタイプなのです。最初は2センチ程度で「このくらいなら誰でもあるし、体調が悪くなければ様子を見ましょう」となりました。

 それが3センチになったのが40代半ば。5センチを超えたあたりで一度薬を飲んで筋腫を小さくする治療をしました。でも1カ月1万円もする薬の割に、劇的な効果がなかったので手術に踏み切ったんです。みんなに「すごい決断」と言われましたけど、「何が?」という感じです。

 とにかく筋腫が大きくなるにつれて生理がどんどん重くなり、体の中に血だまりみたいなものがあって、それがドサッと下りてくる感じでした。舞台に出演しているときは、薬で一時的に生理を止めなければならなかったくらい。

 痛みはなかったけれど、「どこまで続くの?」と思ったんですよね。性格的に嫌なものはすぐ排除するタイプだから、手術をネガティブに捉えることはありませんでした。もっと重い病気の方と比べたら大した決断ではありません。手術も40分ぐらいで終わりましたし、入院も2週間未満。術後数日は痛かったけれど、5~6センチ切っているので仕方ないです。

 一番痛かったのは3日目に病室を移るために歩かされたときでした。切除した子宮上部のキズの上にドサドサッと内臓が落っこちてきたものだから、その痛みったらなかったです。婦人科の先生ってスパルタですよ。そのタイミングで尿道カテーテルも外されたので、トイレには自力で行かなければならなくなりました。点滴棒を杖代わりにヨチヨチ歩いて、お腹に力を入れると痛いので、せせらぎのままに排泄しました(笑)。

 入院中は食事ぐらいしか楽しみがないんですよ。朝は6時半、昼は11時、夜は17時に栄養バランスのいい食事を毎日していたら、えらいものでちゃんと痩せたのです。規則正しい生活をすれば痩せられるのだという発見がありました。

 子宮上部を切ったのは、筋腫が子宮内膜上部にできていたからです。筋腫は悪性ではないけれど、筋腫だけ切除して子宮を全部残すと、子宮体がんや頚がんになるリスクが生じるそうなのです。

「砂羽さんの卵巣は元気でホルモンが出ている。がんは女性ホルモンをエサにして出てくるから」と説明されました。

女優の鈴木砂羽さん(写真)Naoko Kumagai、(スタイリスト)Rieko Sugimura
我慢は症状を進行させるだけ

 じつは12年前に子宮頚がんの前段階が見つかって、子宮入り口部分をレーザーで円錐状に焼き切る円錐手術を受けたことがあったので、がんのリスクが高まるのは嫌だなと思いました。

 でも子宮を全摘すると術後にホルモン療法などの必要が出て、体への負担が大きくなる。もっといえば、肌や髪のツヤのためには残しておいた方がいいようで、仕事柄を考えて上部切除となりました。

「子宮上部を切ると、卵巣はどうなるんですか?」と先生に聞いたところ、卵巣は筋膜にくっつけるから大丈夫と言われました。よくわかりませんでしたが、卵巣は生きて活動しています。ただ、子宮に直接つながっているわけではないので生理になることはなく、子宮から何か不要なものが出てくる生理っぽいものがあるだけです。卵巣から卵子が枯渇するまで続くと言われました。

 喪失感? 特にないです。上部は取ったけれど、まだあるからかな。もう忘れていましたよ(笑)。

「なんでも経験」と思っちゃうので、手術も入院も有意義なものでした。3カ月でお腹の痛みが減って、半年もしたら全然痛くなくなるんですから、人間の治癒力や再生力のすごさを知りました。

 それもこれも早めに処置できたからだと思います。早期発見、早期治療とよく言われますけど、女の人って我慢するのが日常になっているでしょう? それは症状を進行させるだけ。虫歯も小さいうちに治せば簡単に終わるのに、放置すると抜歯やインプラントなど、お金も時間もかかるようになるじゃないですか。病気は弱っている部分を気づかせるためのサインで、悪者扱いしない方がいいなと思います。

 特に子宮って、“女性の感情がたまる場所”だと聞きました。悲しみや憎しみや悔しさなど、抑え込んだ感情が全部子宮にたまるんですって。だから子宮にしがみつくのではなく、手放した方が楽になるなと私は考えました。手術の怖さよりも手放したあとの楽を選んだだけ。

「手術が怖い」という人もいますが、自分の細胞を信用することが大事だと思います。すべての細胞は修復に向けて全集中してくれるから。病気の場所に意識をフォーカスするのではなく、筋腫を取ったら、「これで良くなったんだ」と思って体を信じていれば、体も心もそのようになる。「病は気から」と言われるくらいですからね。

 半年に1回の定期検診で今のところ問題なし。まだ1年ですが、何もなかったかのように過ごしています。

(聞き手=松永詠美子)

▽鈴木砂羽(すずき・さわ) 1972年生まれ、静岡県出身。94年に映画「愛の新世界」で主演デビューを果たし、その後も映画やドラマで活躍。テレビドラマ「相棒」シリーズでは亀山美和子を好演した。2023年5月、所属事務所から独立し個人事務所「MONDAY」を立ち上げた。



■本コラム待望の書籍化!愉快な病人たち(講談社 税込み1540円)好評発売中!

関連記事