医者も知らない医学の新常識

「寝だめ」の医学的有効性は? 普段の睡眠6時間以下に効果あり 米国で3400人を対象に調査

普段の睡眠時間が6時間以下なら効果あり

 睡眠時間を十分に取ることは、健康長寿のための重要な生活習慣と考えられています。アメリカの専門学会の提言では、毎日7時間以上の睡眠を取ることが、心身の健康のためには必要だと記載されています。しかし、実際にはもっと短い睡眠しか取れていない人が多いのが、日本の現実ではないでしょうか?

 短い睡眠は動脈硬化や認知症、うつ病などの危険性を高めると指摘されています。このリスクにどう対処するべきでしょうか? 睡眠時間の短い現代人が、しばしば行っている習慣が、週末などの休日の「寝だめ」です。医学用語では「キャッチアップ睡眠」と呼んでいます。仕事をしている日は短い睡眠しか取れないので慢性的な寝不足となり、その分、休みの日に長く寝て、その不足を取り戻そうというのです。

 それでは、寝だめをすることで、睡眠不足による病気の予防につながるのでしょうか? 今年の睡眠医学の専門誌に、寝だめの有効性についての論文が発表されています。アメリカで3400人の健康調査を解析したところ、週末に1時間以上の寝だめをした人は、そうでない人と比較して、心臓病や脳梗塞などになるリスクが低下していました。

 この寝だめの健康効果は、特に普段の日の睡眠時間が6時間以下の場合に強く認められ、そのリスクは66%も低下していたのです。睡眠不足の人にとっては、休日の適度な寝だめは、健康習慣として一定の意義がありそうです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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