日本版「足病医」が足のトラブル解決

最近、足の感覚が鈍いのですが糖尿病の合併症でしょうか?

糖尿病患者の10%の人に足病変が

 初診で足の状態をアセスメントしたところ、足の治療が全く行われていない上に、切断が必要なほど骨に感染も広がっていない。外来で、他の組織を残しつつ感染している部分だけを削り、「免荷」と呼ばれる歩行を維持しながら患部に負荷がかからない装具の着用だけで3カ月後には完治し、切断の回避はもちろん、現在は仕事にも復帰されています。

 血流障害により下肢を切断した患者さんの5年後の死亡率は約70%以上と報告されています。神経障害や免疫力の低下は血糖コントロールや服薬治療である程度補えますが、血流障害によって一度壊死した組織を蘇らせる治療は既存法では限界があります。

 また、健康な人が交通事故で足を切断しても、義足を履いてリハビリを行えます。しかし、切断に至る糖尿病の患者さんは、全身状態が悪いことが多いので、特に高齢者の場合はリハビリが難しい。

 糖尿病の患者さんは、血糖値を下げるためにも歩行や運動を指導していますが、歩けなくなると糖尿病そのものが悪化する可能性が高いです。切断を防ぐには、日頃のフットケアが最も大切です。

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田中里佳

田中里佳

2002年東海大学医学部卒業、04年同大学形成外科入局、06年米国ニューヨーク大学形成外科学教室留学、12年順天堂大学医学部形成外科学講座准教授、医局長を経て現職を務める。

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