教えて放射線治療 ドクター黒﨑に聞く

がんの「オリゴ転移」では放射線治療を“最期の手段”にしない

(提供写真)

 前回は局所療法としての「手術」と「放射線治療」を比較しましたが、かつては遠隔転移が出た場合の局所療法は意味がないと考えられてきました。遠隔転移とは血行性転移ともいわれ、血流に乗ってがん細胞がほかの臓器に転移することを言います。有名なのは脳転移、肝臓転移、骨転移などです。

 近年、「オリゴ転移」という言葉が登場しました。オリゴとはギリシャ語で「少ない」という意味で、オリゴ転移とは少数個のがんの転移のことです。一般的には「5個以内の転移」を指します(実際には初診時に5個以内の場合と再発時に出てくる場合などで細分化されています)。

 この病態に対し、標準的な抗がん剤に「定位放射線治療」を加えたほうが予後が長くなることが知られています。また2023年12月には、「非小細胞肺がんと診断され、1ライン以上の全身療法を受けた結果、転移巣が5個以下になった人が次の治療を考える場合、標準治療に定位放射線治療を加えることで無増悪生存期間の延長が期待できる」と報告されました。

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黒﨑弘正

黒﨑弘正

江戸川病院放射線科部長。1995年、群馬大学医学部卒。医学博士。日本専門医機構認定放射線専門医、日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医。JCHO東京新宿メディカルセンターなどの勤務を経て2021年9月から現職。

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