教えて放射線治療 ドクター黒﨑に聞く

「オリゴ転移」に遭遇し、臨床で迷うケースとは?

(提供写真)

 前回お話ししたように、転移があっても少数の転移を「オリゴ転移」といい、放射線治療で長生きできることが証明されています。今回はそのオリゴ転移をめぐり臨床で困るケースを紹介します。

 残念ながら抗がん剤には放射線治療とあまり相性が良くないとされる薬があります。たとえば、胸部照射とEGFR阻害薬の「タルセバ(タグリッソ)」や「イレッサ(ゲフィチニブ)」です。間質性肺炎を起こしやすいからです。また、腹部~骨盤照射と抗VEGFヒト化モノクローナル抗体の「アバスチン(ベバシズマブ)」は腸管穿孔を起こしやすいことが知られています。

 放射線治療医によっては、これらの投与がされているケースでは、放射線治療を禁忌としている場合もあります。ちなみにアバスチンは腸への影響は問題とされますが、脳腫瘍では放射線治療と同時に使うのが一般的です。

 ただ、これらの薬も永遠に効いているわけではありません。いつかは効かなくなり、腫瘍は大きくなっていきます。そもそもEGFR阻害薬単独投与でも間質性肺炎の発症リスクがあります。

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黒﨑弘正

黒﨑弘正

江戸川病院放射線科部長。1995年、群馬大学医学部卒。医学博士。日本専門医機構認定放射線専門医、日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医。JCHO東京新宿メディカルセンターなどの勤務を経て2021年9月から現職。

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