「鍼灸」がうつ症状を改善する 専門医がうつ病学会で発表

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 大抵の患者が、1回目の施術から「体が楽になった」と話す。翌日には元通りに戻るものの、繰り返し鍼灸を行ううち、ベースラインが良くなっていくという。

「鍼灸はプラセボ条件を設定するのは難しく、体が楽になったのはすべて鍼灸のおかげかは現段階ではなんとも言えません。もしかしたら、丁寧に1時間ほどかけて週2回、5週間かけてケアをしてもらうことが功を奏し、鍼灸とは関係なしに、体調が良くなっているのかもしれない。今後さらなる研究が必要ですが、昭和大学の生理学の先生がネズミに鍼灸を行ったところストレスホルモンが減少したというデータを出しており、鍼灸が人にも同様の結果を出している可能性があります」

 中村医師が鍼灸に期待するのは、「なんの効果も感じなかった」という患者がとても少なかった点も大きい。

「私はうつ病患者さんの脳に磁気刺激を与える反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法の臨床研究も行ってきたのですが、これは効く人と効かない人がいます。一方、鍼灸は程度の差はあれ、鍼灸を行ったうつ病患者トータル約300人が、なんらかの改善効果を報告しているのです。副作用で脱落する人もいない。マイナス点が少ない治療の選択肢ということで、今後さらなるデータを取って、臨床で行えるようにしていきたい」

 ゆくゆくは、精神科と鍼灸で手を組んで集学的なうつ病治療を行うことも考えているそうだ。

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