独白 愉快な“病人”たち

元キックボクサー 俳優 武田幸三 (41)

(C)日刊ゲンダイ

 お客さんが何日も働いて得たお金をいただいていると思うと、楽しませることができないのが申し訳なくて仕方がない。「おまえからしかチケットは買わない」と言ってくれる皆さんに対して、今のままではリングに上がる資格がないと思い、目の手術をすることに決めました。

 手術自体は案外時間がかからないものでした。局所麻酔で、話しながら調整していましたから。見えるように手術するといっても、目のレンズ調整ができなくなっているものを単焦点にする。つまり範囲をひとつに絞って焦点を合わせるようにするんです。

 俺に必要なのは試合の時の目。ファイティングポーズを取った時の目線に合わせました。「これ見える?」「こっちは?」と医師に聞かれて、話しながら1時間もかからなかったと思います。

 手術が終わるとヒマでヒマで仕方がない。ちょうどマネジャーが来たので、彼と一緒に病院着のままタクシーに乗って赤羽のスタミナ苑まで焼き肉を食べに出た。そしたら病院から携帯がかかってきて……。俺としては再出発を誓うための焼き肉だったんですけどね。焼き肉のにおいプンプンで戻ったら、医師にめっちゃ怒られました。

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