当事者たちが明かす「医療のウラ側」

米ではヘディング禁止「子どもの脳震とう」の深刻リスク

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 ところが、頭部が激しく揺さぶられたり、強い衝撃を受けたりすると、脳は頭蓋骨の内壁にぶつかり、脳を構成する神経細胞(ニューロン)が傷つきます。むろん、「神経信号を伝えるニューロンの通信ケーブルである軸索の束」(白質)も引きちぎられます。

 当然、脳に炎症が起き、脳圧が上がり、カルシウムイオンやカリウムイオンが増えます。こうした化学物質は後々、脳細胞を傷つけたり、破壊するなどの悪さをします。それを防ぐために、人の体はカルシウムイオンやカリウムイオンを排出しようとするのですが、それにはエネルギー源としてブドウ糖が必要となります。ところが、脳内にカルシウムイオンやカリウムイオンがあふれているために血管が収縮し、必要な箇所にブドウ糖が届けられなくなるのです。さらに脳がダメージを受けると、記憶を支えるために必要なNMDA型グルタミン酸受容体が減少することも分かっています。脳震とうが起きてから数週間から数カ月後にその悪影響が出るのはそのためです。

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