Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

川島道行さんは闘病19年 脳腫瘍グレード2で5年生存率は7割

ユーチューブから

 悪性度は4段階で、グレード2までは比較的進行が遅く、良性の範疇に入り、手術で全摘できれば治療は終了。グレード2は20~40代に多く、5年生存率は7割ほど。決して治療成績は悪くありません。

 川島さんは診断当初、28歳。再発に苦しめられながらも、公表までは治療がうまくいっていたのではないでしょうか。女優の須藤理彩さん(40)と結婚したのは06年で、その後、2人の子宝に恵まれています。家族の支えも大きかったのでしょう。それまでは作品をコンスタントにリリース。ライブ活動も頻繁に行っていました。

 とても前向きに生活されていた様子がうかがえますが、公表翌年1月のアルバム発売後は、今年のEPまでライブ盤とアルバム1枚のみ。公表の前くらいから、病魔が進行したのでしょうか。

 悪性脳腫瘍の3分の1程度を占めるグリオーマというタイプは、正常組織に染み込むように広がるため、正常組織との境界が分かりにくい。さらに、近くに重要な神経や血管があったりすることもあって、手術で十分に取り切れないケースが多く、術後に放射線や抗がん剤を追加するのが普通です。川島さんも、悪性グリオーマだった可能性があります。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。