Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

渡瀬恒彦さんのケース<上> がんなら家族が満足する介護できる

渡瀬恒彦さんは享年72(C)日刊ゲンダイ

 これまでの経験から、がんで動けなくなると、せいぜい1週間ほどで最期を迎えます。それが大きな意味を持つのは、患者を支える家族の介護の負担です。

 ある子宮頚がんを克服した30代女性はその後、肺がんで苦しむ70代の父に寄り添うことに。その時もインフルエンザから気胸を併発。容体が悪化してから1週間、妻と2人の子供に見守られての最期でした。

 1週間という期間なら、みんなががん患者に思いを寄せながら、介護を乗り越えることができます。みとった後、やり切った感を覚える方も少なくありません。愛情を持って見送ることができるのです。認知症や脳卒中の後遺症を抱えて、何年も介護が続くのとは決定的に違いますから。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。