Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

前立腺がんの放射線治療を最大限活かす「1センチの隙間」

ロッド・スチュワートは3年前に前立腺がんが見つかった(C)DPA/共同通信イメージズ

 脂肪の摂取量が増えるほど、前立腺がんの死亡率が上がることは、国際的な研究で明らかになっています。前立腺がんは男性ホルモンの影響を受け、その男性ホルモンがコレステロールから合成されるためでしょう。前立腺がんの罹患数は、2020年に1995年の6倍に増加。肺がんや大腸がんは2倍前後ですから、前立腺がんは突出しています。

 ロッドがどんな治療を受けたか分かりませんが、欧米では7割が放射線ですから、恐らく放射線でしょう。一部報道には「がんが消えた」といった表現もあります。

 放射線の治療効果は、手術と同等で完治が期待できます。手術は、尿漏れや勃起障害のリスクがありますから、放射線を選択しないのは、もったいない。

■IMRTなら5回照射で終了

 実は、放射線にも、直腸障害というリスクがありました。前立腺は直腸に接しているため、前立腺に放射線を照射すると、少なからず直腸も放射線を浴びるため、治療後3カ月以降に直腸出血が生じ、最悪の場合、人工肛門になる恐れもあります。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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