Dr.中川 がんサバイバーの知恵

がん闘病中の小倉智昭さんが直面…「最後の治療」に垣間見える家族力

小倉智昭さん(C)日刊ゲンダイ

 がんはいろいろな局面で考えさせられることがあり、家族の力や人間力が問われる病気です。昨年、腎臓がんで左の腎臓を全摘したアナウンサーの小倉智昭さん(76)もそこを実感したかもしれません。朝の情報番組でがんのことなどについて語ったことが話題を呼んでいます。

 報道によると、主治医の勧めで免疫チェックポイント阻害薬のキイトルーダを始めるそうです。その目的は、「がん細胞が体に残っているのはほぼ確実で、この先、転移もするから、免疫を高める治療をしましょう」といいます。

 小倉さんは腎臓がんを患う前の2016年に膀胱がんを公表。その5年後には肺への転移が判明していますから、主治医の見解は妥当でしょう。その説明に続けたのが、「最後の手段として」という言葉でした。

 がんは手術と放射線、抗がん剤をはじめとする薬物療法が3大治療で、ステージごとに受けられる治療が細かく決まっています。その中で、最新の薬である免疫チェックポイント阻害剤は、膀胱がんのほか肺がん、腎臓がん、頭頚部がん、食道がんなど種類としては多くのがんに使えますが、ほとんどが手術や抗がん剤を使えない進行がん、ステージ4を対象としているのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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