緊急企画 新型コロナを正しく恐れる

なぜ米はグランド・プリンセスの乗客を早期下船させるのか

数理モデルではクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の感染者は9分の1に抑えられた(C)日刊ゲンダイ

 研究チームは、感染症流行予測の数理モデルのひとつ「SEIRモデル」を用いて、クルーズ船における新型コロナ感染症の基本再生産数(R0)を算出した。R0とは1人の患者が何人の人に病気をうつすかを示す数値だ。その結果、検疫・隔離を開始する前の船内のR0は14.8で、武漢市(3.7)の4倍に達していた。検疫・隔離の開始後は、1.788まで低下した。

 こうした数値を基に、1月21日~2月19日の期間中にまったく検疫・隔離を行わなかった場合の感染者数を算出したところ、2920人(79%)とはじき出された。つまり、検疫・隔離により約2300人の感染が回避されたことになる。

■感染者70人にとどまった可能性も

 一方、横浜港に入港した2月3日時点で全員を下船させた場合の潜伏期の感染者数は76人で、横浜港到着直後に全員を下船させた上で陽性者および感染の可能性がある者に対処していれば、計算上の感染者は約70人にとどまり、検疫の末に発生した感染者数600人超を大幅に下回ったとしている。

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