上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

患者さんには「医療安全」に則したきめ細かな対応が必要

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

■常に「患者を守る側」に立つ

 もちろん、患者さん側から質問したり、要望を伝えたりといった主張をしても問題ありません。その主張を受け入れて、医療機関側が正しく対応してくれるかどうかを判断してください。たとえば、私が患者さんから僧帽弁閉鎖不全症に対する小切開心臓手術「MICS」(ミックス)について、「先生はどれくらいミックスの経験があるんですか?」と聞かれた場合、正直に「30例くらいです」と回答します。数年前までは、手がけてこなかった手術法なので、まだ症例数が少ないのです。

 もし、ここで「300例ほどあります」と答えてしまえばウソつきになってしまいます。たとえ患者さんに不安を抱かせないようにしようという意図があったとしても、医療安全の考え方に反しています。これでは患者さんから信頼を得ることはできません。正直に丁寧に説明をすることで、患者さんから「症例数が少なくても、この先生なら安心して任せられる」と信頼されることが大切です。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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