患者さんを守るためにEBM(根拠に基づく医療)を含む「医療安全」を考慮した結果、外科医が「手術をしない」という選択をしなければならないケースもあります。しっかりしたエビデンスがなかったり、ガイドラインでは推奨されていない治療を行うことは、患者さんにとって不利益になることが分かってきたからです。患者さんの安全を優先して最初から手術をしないというケースは、かつてはほとんどありませんでした。どんな患者さんでも、外科医のところまでやって来た時点で“手術ありき”だったからです。そんな時代は、「処置できるかどうかはわからないけれど、とりあえず開腹してみましょう」といったケースも珍しくありませんでしたが、いまは限りなく少ないレベルと言えます。
そうした医療安全やエビデンスを軽視した治療を行って、もしも何かトラブルが起こったときは、患者さんはもちろん医師や病院にとっても致命傷になりかねません。ですから、医師は治療を行う前に、患者さんが納得して同意するまで丁寧に治療の説明をします。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」