事故による脳損傷で「怒り」が制御不能に…注目される根治療法

写真はイメージ

■1回30分、全8回のプログラム

 脳損傷後の怒りは脳の器質異常のために起こると医学書にも載るほどで、根治は半ばあきらめられていた。しかし宗医師らは自らの治療経験を通じ、脳損傷後の高次脳機能障害でも心理的アプローチで怒りのコントロールは可能と確信。独自の認知行動療法プログラム開発に至った。

 プログラムは週1回30分のセッションを全8回で構成されている。治療の前半は、患者自身がどういうプロセスで怒りが生じたかを、時系列に見える化して分析する「感情すごろく」を練習する。これを繰り返すことで、怒りの構図を客観視することが可能になる。

「怒りを含め激しい感情の大半は、実は二次的に発生したフェイク感情です。その奥底には、感じるのに苦痛を伴うリアルな感情が存在します。たとえば交通事故で障害を負い、今まで通りの人生を送れなくなり、それを周りに理解してもらえない悲しみや不安の気持ち、これが一次感情です。でも、これがあまりにつらいと、人は怒りなどのフェイク感情に目をそらし逃げがちです。そこで治療後半では、怒りの背後に潜在する一次感情を直視する練習を行います。それができると、役割を失った怒りはもはや無意味となり、意識にのぼらなくなります」

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