男性不妊症のすべて

男性の治療はどのように進んでいく?患者の6分の1が無精子症

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 また、手術後も培養室で全量検索を続けて、精子がいないかどうか確かめています。精子がいた場合は、液体窒素を用いて凍結します。

■合併症でテストステロン値が低下する場合も

 TESEにおける合併症は、精巣組織を採取することでテストステロン値が低下することです。術前の総テストステロン値が3・0ng/ml以下を示す場合は注意が必要です。術後に低テストステロン血症になると、疲れやすくなったりうつ状態になったりします。低テストステロン血症には、内服薬による治療法はありません。テストステロンを注射で投与することになります。個人差にもよりますが、2週間から4週間おきに外来受診が必要になり、継続で注射が必要になります。

 TESEは保険適用ではないため、費用が比較的高額になります。厚生労働省が行なった不妊治療費用の実態調査によると、シンプルTESEは約19万円、マイクロTESEは約32万円でした。しかし、2021年1月からの助成金の拡充により、妻年齢が43歳未満であれば男性の年齢制限はなく、1回当たり30万円が給付されます。そのため、自己負担も少なく治療を受けることができます。

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小林秀行

小林秀行

1975年、東京都生まれ。2000年東邦大学医学部を卒業。卒後研修終了後に東北大学大学院医学系研究科病理病態学講座免疫学分野に進学。医学博士を取得。ペンシルバニア大学獣医学部にてリサーチアソシエイト。その後、東邦大学医学部泌尿器科学講座に復帰。2014年より現職。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本生殖医学会生殖医療専門医。専門は男性不妊症。noteにてブログ「Blue-男性不妊症について」を配信中。

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