国立がん研究センターのチームも、腹膜播種による腹水から採取したがん細胞などの全遺伝情報を調べています。その結果、細胞増殖に関係する7つの遺伝子の異常が半数ほどで見つかり、4遺伝子について分子標的薬が有効とみられているのです。
腹膜播種を抑える治療法として、抗がん剤を腹部に直接注入する腹腔内化学療法が期待されています。東大病院では昨年7月からスキルス性胃がんへの効果を確認するための治験をスタート。今後、国立がん研究センターらの研究チームの成果を加味すると、分子標的薬の腹腔内投与も検討されると思います。
スキルス性胃がんは、転移のない、手術ができる段階で見つかっても5年生存率は15%ほど。通常の胃がんはステージ1なら9割を超えるため、その差は歴然です。スキルス性は、手術できるケースでも腹膜に転移しやすい特徴があり、腹膜播種を強力に抑えることはとても重要なのです。
Dr.中川 がんサバイバーの知恵