コロナ禍のストレス解消のカギは「胃脳相関」

心と体の健康は、胃と脳のネットワークを整えることが重要なポイント!

「胃は心のバロメーター」とはよく耳にするフレーズだ。が、実際に胃と脳が互いに密接に関連しあう「胃脳相関」の存在が、最新の研究で明らかになりつつあることが、先週開催されたオンラインマスコミセミナー「胃と脳のネットワーク!胃脳相関の可能性とは~胃と脳をつなぐ自律神経~」で報告された。コロナ禍のストレス解消のカギは、この「胃脳相関」にあるかもしれないのだ。

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「コロナ禍で胃の不調を感じる人が増えているといわれていますが、胃カメラなどの検査を受けても胃には何の異常も見つからないケースが多いのです」とは、機能性消化管疾患ガイドライン作成委員長でもある兵庫医科大学の三輪洋人教授。

 胃はきれいなのに、何故胃の不調が起こるのか。

「実は、胃カメラで異常が見つからなくても胃の働き(機能)に変調が起きているからです。胃には、①胃酸の分泌、②蠕動運動、③知覚の3つの働きがありますが、これらの異常によって不快な症状が出てくるのです」

兵庫医科大学主任教授、同病院診療部長(消化器内科)、内視鏡センター長 三輪洋人氏

 こうした胃の不調が慢性的に起こる場合は、機能性ディスペプシア(FD)と呼ばれており、日本人の10人に1人はかかっているといわれている。

「心臓や胃腸などの内臓は、私たちの命を維持するために24時間働き続ける自動運転機能の自律神経と呼ばれる神経がコントロールしています。自律神経は自分への危険を敏感に察知する神経でもあるので、危険や不安を感じたり、疲れやストレスが溜まってくると、交感神経の緊張状態が続いて自律神経が消耗し、胃の働きが変調をきたして胃の不調が表れるのです」

 胃と脳は自律神経によってつながっており、例えば、食事をするときは、その情報が脳から自律神経を介して胃に伝わり、胃の動きや胃酸の分泌などが調節される。一方、自律神経を介して逆方向の胃から脳への情報伝達もあり、互いに影響を与えあっていることが最近の研究で分かってきているのだ。

川崎医科大学総合医療センター総合内科学2(消化器内科)特任教授 春間賢氏
LG21乳酸菌が自律神経のバランスを整え、胃の働きを改善するメカニズムとは?

 消化管医療のエキスパートとして知られる川崎医科大学消化器内科の春間賢教授も胃と脳の相関関係についてこう話す。

「胃のシグナルは脳の広範囲に及んでおり、胃の不調は不安感を増幅することが分かっています。また、胃が、胃脳相関を介して全身の健康を司っている可能性も示唆されています」

 LG21乳酸菌が、自律神経のバランスを整え、低下した胃の働きを改善する可能性があることから、春間教授らの研究グループは研究員らとともに、軽度から中等度の胃排出遅延(胃の中にある食べ物が十二指腸へと送り出される速度が普通より遅いこと)が見られる20〜64歳の日本人27人を対象にして、12週間に及ぶ臨床試験を実施した。

 被験者は2つのグループに分けられ、片方のグループにはLG21乳酸菌のヨーグルトを、もう1つのグループには同乳酸菌を含まないヨーグルトを1日1個(85グラム)、12週間摂取してもらい、試験の前、摂取開始から12週間後に「自律神経の働きを検査する唾液アミラーゼ検査」と「胃排出能を検査する13C呼気法胃排出能検査」を行った。「唾液アミラーゼ検査」は、唾液に含まれるアミラーゼと呼ばれる酵素の濃度が自律神経の機能異常を表す指標となるため。一方、「13C呼気法胃排出能検査」は、胃排出速度を算出するためのものだ。

「試験の結果、LG21乳酸菌入りのヨーグルトを摂取したグループは、同乳酸菌を含まないヨーグルトを摂取したグループと比べ、唾液アミラーゼ濃度の有意な低下(ストレスが少ない状態=自律神経のバランスを整えられる)が認められ、胃もたれなどの胃の不調の原因となる胃排出遅延が改善されやすい傾向がみられたことを確認しました」(春間教授)

 この研究成果は、本年5月に国際的な学術誌「Nutrients」にも取り上げられている。

「今回の研究によって、LG21乳酸菌が自律神経のバランスを整え、心身の体調維持に役立つ可能性があることが示されました。加えて、低下した胃の働き、機能を改善する可能性があることも分かりました。このことから、胃脳相関の健全化を通じて、心身の健康にも好ましい傾向を与える可能性があると考えられます」

 つまり、胃をケアすることは、胃の健康だけでなく、心身の健康を手に入れられる可能性があるということだ。コロナ禍でストレスを強く感じているなら、ぜひ試してみたいものだ。