血液型と病気

感染症を媒介する蚊が好む血液型はあるのか O型は刺されやすい?

蚊からデング熱ウイルスが検出された代々木公園近辺の張り紙(2014年)/
蚊からデング熱ウイルスが検出された代々木公園近辺の張り紙(2014年)/(C)日刊ゲンダイ

 感染症のリスクを論じる際には、重症化リスクだけでなく、感染するリスクも考慮する必要があります。マラリアの感染リスクとは、原虫を持った蚊に刺されるかどうかです。マラリアを媒介できるのは、メスのハマダラカだけです(オスは吸血しません)。マラリア原虫を持った蚊がどのくらいの割合で存在するかは、地域によって異なりますが、蚊に刺される回数が多いほど、感染リスクが高まることはたしかです。

 そこで気になるのが血液型です。昔から「O型は蚊に刺されやすい」と言われてきました。ところがこれは、ただの俗説でもなさそうです。

 1972年にイギリスのオックスフォード大学の研究者たちが、ハマダラカに血液型の好みがあるかどうかを調べる実験をしてみました。102人の被験者(A型41人、B型14人、O型42人、AB型5人)の腕を、それぞれ10分間ずつ、20匹のハマダラカが入った袋に入れて、何回刺されたかをカウントするという単純明解な実験です。

 結果は次のようになりました。

血液型:刺された回数の平均
O型  5.05回
A型  3.28回
B型  4.25回
AB型 3.50回

 つまりO型が平均してもっとも多く刺され、A型がもっとも少なかった、というわけです。

 とすると、O型のマラリア感染リスクが高いことになります。ただアフリカにおける調査では、血液型による感染の違いはほとんどないことが確認されました。マラリア原虫を持った蚊が多い地域では、この程度の違いは、感染リスクにほとんど影響しないようです。

 しかしO型は、ハマダラカ以外の蚊からも好かれているようです。ヒトスジシマカ(普通のヤブカ)もO型を好むという研究が複数発表されています。日本の研究機関でも実験が行われ、O型はA型の2倍もヒトスジシマカに好かれるという結果になりました。

 ヒトスジシマカはマラリアは媒介しませんが、デング熱を媒介します。2014年、東京の代々木公園でのアウトブレークが思い出されます。都内で108人がデング熱に感染しましたが、その血液型の内訳が調べられていないのは残念です。しかし海外の研究で、O型はデング熱の感染リスクが非O型と比べて高いという結果が出ています。O型の人は、防蚊対策をしっかり心がけるべきでしょう。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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