血液型と病気

他の型の人に輸血可能な「O型」は万能血液 血液中の抗体と輸血のパターンは?

写真はイメージ
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 血液型を決めるのは、赤血球の糖鎖(A抗原、B抗原、O抗原)ですが、もうひとつ重要な要素があります。それが各抗原に対する「抗体」です。

 A型の人の血液中には、B抗原に対する抗体(抗B抗体)が存在しています。またB型の血液中は抗A抗体、O型の人は抗A抗体と抗B抗体の両方を持っています。逆にAB型の人は、いずれの抗体も持っていません。

 A型の血液をB型の人に輸血すると、レシピエント(輸血を受けた人、この場合はB型の人)の抗A抗体が、ドナー赤血球(この場合A型)のA抗原と激しく反応し、ドナー赤血球が破壊されて「溶血」と呼ばれる現象が生じます。つまり輸血失敗です。同様にA型の人にB型の血液を輸血すると、ドナー赤血球のB抗原をレシピエントの抗B抗体が攻撃するため、やはり溶血反応が起こります。

 AB型の人は、抗A抗体も抗B抗体も持っていないので、A型、B型のどちらからも輸血を受けることができます。しかしAB型の血液を、A型やB型の人に輸血することはできません。AB型の赤血球にはA抗原とB抗原の両方が結合しています。これを仮にA型の人に輸血すると、血液中の抗B抗体が攻撃を仕掛けるため、やはり溶血を起こしてしまいます。B型の人に輸血しても同じです。

 O型は、抗A抗体と抗B抗体の両方を持っているため、O型以外の血液は輸血できません。しかしO型の赤血球にはA抗原もB抗原も存在しないため、他の血液型の人に輸血することができます。その意味で、O型は万能血液と言えます。

 しかし今の医療では、異なる血液型を輸血することは、原則として行われていません。理屈の上では問題なくても、実際には例外的な出来事がしばしば起こり得るからです。血液型を調べる時間的余裕すらないなど、よほどの緊急事態でない限り、O型の血液を他の血液型の人に輸血することはありません。

 ちなみに抗体は、外部から異物が侵入してきて初めて作られます。ところが抗A抗体や抗B抗体は、生後半年以内に自然にできてくるのです。その理由については諸説ありますが、腸内細菌の刺激によるものだとする仮説が有力視されています。細菌の中には、A抗原やB抗原とまったく同じ、ないしは非常によく似た糖鎖を有するものがいます。それらと共存していくうえで、自分の血液型とは異なる糖鎖に対する抗体が作られるというのです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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