時間栄養学と旬の食材

ワサビには消臭や抗菌のほかに抗がんや血液サラサラ作用あり

細かくすればするほど効果が強い

 ワサビ特有のツンと鼻につく辛味の主成分は、アリルイソチオシアネート(AIT)。AITの抗菌作用は比較的強く、腸管出血性大腸菌O-157、ヘリコバクターピロリ菌、酵母、カビなどを防ぐ、抗菌効果を持つ特徴が報告されています。マウスの実験にはなりますが、ワサビ抽出物をヘリコバクターピロリ菌に感染したマウスへ投与すると、胃細胞の悪化を抑えられるという結果も出ているほどです。

 また、AITの化合物のひとつでワサビの成分の中にもある、6メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートが血小板凝集阻害作用や、抗がん作用を持つことも報告されています。

 AITは、ワサビを切ったりすりおろしたりすることで組織を傷つけ、空気に触れると生成される辛味成分です。細かくすればするほど多くの細胞が空気に触れるため、香りや辛味が強くなり、殺菌効果も高まることも分かっています。最近では、気化したAITの殺菌効果が高いことが報告されたことからも、食品を製造する際の袋内部をAITを含んだ気体で充満させることで、微生物の増殖を抑える方法も開発されています。

 ワサビには食物繊維、カリウム、カルシウム、ビタミン類が多く含まれていますが、使用量が少量であるため、栄養素よりも辛味成分の効力を重要視するといいかもしれません。

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古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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