「腸管バリア」を強化して万病の元「腸もれ」を防ぐ!

 最近「リーキーガット症候群」なる言葉をしばしば耳にするようになった。リーキーは「漏れ」、ガットは「腸」を意味し訳すると「腸もれ」。現代の万病のもとになるといわれ医学界の注目を集めているこの腸もれに悩む人が、長引くコロナ禍で急増しているという。

■コロナ以降「腸もれ」に悩む人が増えてきた

 消化器専門医で日頃、下痢、腹痛などの症状を訴えてくる患者を数多く診察している国立消化器・内視鏡クリニックの吉汲祐加子院長はいう。

「便通異常を起こしている患者さんの中で腸もれが原因と考えられる方がコロナ以降、2割から3割は増えたように思えますね。その背景にはコロナ禍でのストレス、生活習慣や生活リズムの乱れなどの変化があるのではないでしょうか」

 腸もれとは、その名の通り腸に開いた穴から病原菌、ウイルス、腐敗物、腸内細菌などが体内に漏れ入ることを指す。そして、それらの異物が血管に入り、血流にのって全身に広がることでさまざまな病気や不調の原因になる。近年、腸に関する研究が進むにつれて腸もれのことも次第に明らかになってきており、現在、日本人の約7割は腸もれの可能性があるといわれている。

国立消化器・内視鏡クリニック 吉汲祐加子院長

■「腸もれ」は全身の病気・不調に関与する

 腸もれによって体内に入り込んだ異物は免疫細胞が攻撃・排除しようとするが、この時、自分自身の体の組織を傷つけることにもなる。これが炎症という症状であり、血管内で炎症が起これば糖尿病や動脈硬化を進行させることになるし、脳で起こると認知症やうつ病などにつながるという研究結果も出ている。

 したがって、こうした炎症が全身のあらゆる場所で生じることが多様な病気・不調につながるわけで、腸もれによって引き起こされる病気や不調が1つや2つではないというのはそういうことなのだ。腸もれが関係している病気・不調には以下のようなものがあるとされている。

●アレルギー疾患…花粉症・アトピー性皮膚炎

●自己免疫性疾患…関節リウマチ・慢性疲労症候群・潰瘍性大腸炎

●消化器系の病気や不調…腹痛・下痢・便秘・吐き気・過敏性腸症候群

●脳や精神関係の病気や不調…記憶力や集中力の低下・うつ病・不眠症

●その他のさまざまな病気や不調…生活習慣病・がん・関節痛・ニキビ・じんましん

■「腸もれ」の原因は「腸管バリア」の機能低下に

 先ほど腸もれは腸に開いた穴から病原菌などが体内に漏れ入ることによって起こると書いた。では、どうして腸に穴が開くのかというと、腸の壁にあって腸を守っている「腸管バリア」という機能の低下が原因となっていることが分かっている。

 腸壁の内側は絨毛という突起で覆われており、絨毛は腸上皮細胞と呼ばれる細胞で形成されている。

 腸もれが起こるのはこの細胞と細胞の隙間で、細胞同士を結合している「タイトジャンクション」が緩むと隙間が広がって、通常は体内に入れない異物が漏れ入るのだ。

■ヨーグルトなど発酵食品で「腸管バリア」の機能を強化

 腸もれを防いでくれる腸管バリアは日頃の食生活に気を使うことでその機能を強化できるという。前出の吉汲院長に聞いた。

「腸もれを防ぐには2つのアプローチがあります。1つは腸管バリアを劣化させる原因となるものを排除すること。例えば小麦のグルテンや食品添加物、遺伝子組み換え食品などがそれに当たりますが、現代の生活はなかなか難しいかもしれませんね。そこで、もう1つ、腸管バリアを強化するためヨーグルトや納豆、味噌などの発酵食品を摂ることを習慣化していただきたいですね。特にヨーグルトには乳酸菌がたくさん含まれていて善玉菌を増やすために働いてくれていますからお勧めです。他には食物繊維、オクラ、ナメコ、ヤマイモといったネバネバ食品も摂るようにしていただくといいですね」

 昨年、ある研究において、「LB81乳酸菌」には緩んでしまったタイトジャンクションを修復する働きがあることが明らかになった。吉汲院長は「この特定の乳酸菌を含むヨーグルトを食べることで同様の働きを得られる可能性があります」と述べている。

 腸に関する研究が急激に進み、腸からの健康づくりへの関心が高まっている今、万病の元として医学界からも注目されている腸もれをいかに防ぐか、それが大きなカギを握っているようだ。

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