医者も知らない医学の新常識

睡眠薬が認知症の予防に有効!? 神経医学の専門誌に掲載

写真はイメージ(C)PIXTA

 認知症の代表であるアルツハイマー型認知症では、まずアミロイドβというタンパク質が脳にたまり、それからしばらくして今度はタウという別の脳内タンパク質がリン酸化という変化を起こして蓄積します。脳細胞が死んで物忘れなどの症状が出るのは、それから後の話です。

 したがって、この2種類のタンパク質の蓄積を防ぐことができれば、認知症自体を予防できるかもしれません。しかし、現在においても、安全かつ確実に、認知症を予防するような治療法は確立されていません。

 スボレキサント(ベルソムラ)という睡眠薬があります。この薬は脳の覚醒を維持する働きを持つ、オレキシンという脳内物質の働きを抑える作用を持っています。じつはこのオレキシンには認知症を進行させるような作用のあることが動物実験などで報告されているのです。

 それでは、この薬を寝る前に飲んで夜間のオレキシンの働きを抑えることにより、認知症の進行予防につながるのでしょうか?

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石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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