感染症別 正しいクスリの使い方

【TDM】薬剤耐性菌MRSAに対する治療では欠かせない有効な手段

抗菌薬の血中濃度で適切な量や回数を提案

 抗菌薬の投与が決定すると、薬剤師は、患者さんの身長、体重、腎機能などから最適な投与量、投与回数を検討し、医師に提案します。バンコマイシンやテイコプラニンの場合には、速やかに効果を得るために初回の投与量などを多めに(ローディングドーズ)提案しています。

 抗菌薬が開始され、一定期間投与されたところで採血を行い、その抗菌薬の血中濃度を測定します。そして、予測通りに血中濃度が推移しているかを確認し、再計算を行い、さらに細かく患者さんごとに適切な投与量と投与回数を提案します。

 この時、予測より血中濃度が高かった場合には、抗菌薬の減量や中止を提案します。逆に予測より血中濃度が低い場合は、抗菌薬の増量を提案するのです。さらにその後は、一定期間が過ぎたところで再び血液検査を行って確認していきます。

 ただ、現在の健康保険制度では、TDMが認められているのは一部医薬品のみで、抗菌薬でもバンコマイシンやテイコプラニン以外では、アミノグリコシド系と呼ばれる抗菌薬くらいしか認められていません。TDMは医療安全のために有用な手段なので、大きな課題といえるでしょう。

 またTDMは、抗菌薬以外では抗てんかん薬や抗不整脈薬などでも可能です。自分が対象の医薬品を服用しているか、確認されてもよいかもしれません。

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荒川隆之

荒川隆之

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

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