高齢者の正しいクスリとの付き合い方

クスリは体に「吸収」されるだけでは効果は発揮できない

高齢者に対する薬物療法は特殊性を考慮する必要がある(C)PIXTA

 クスリを服用すると、食べ物や飲み物と同様に胃に入ります。そこで水分や消化液に触れることによりクスリが溶解します。クスリによっては胃ではなく小腸で溶解するように工夫されているものもありますが、いずれにしても吸収はまずクスリが溶解することから始まります。吸収はクスリの成分が消化管の粘膜を通過して血液内に移動することを意味しますが、そのためには錠剤や散剤といった固体ではなく液体である必要があるのです。

 多くのクスリは溶解したあと小腸で吸収されていきますが、吸収される部位はクスリの成分ごとに異なります。また、クスリの成分によっては油に溶けやすいものもあり、そうしたクスリは食事に含まれる脂質の量によって吸収の度合いが変わってしまう場合もあります。食事の内容によって吸収の度合いが変わるようなクスリは、その影響を避ける目的で「食前」に内服するようになっていることもあります。

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東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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